Nature Remo nanoの省資源化の取り組み

Natureのメカエンジニアをしているたるちです。この記事は、第 2 回 Nature Engineering Blog 祭の 7 日目の記事になります。 前回の投稿から約一年が経過していて少しびっくりしています。

今回はNature Remo nanoをテーマにMatterに言及したものが多いですが、メカエンジニアとして少し変わった切り口で取り扱っていきたいと思います。


みなさんトロッコ問題はご存知ですよね。 トロッコ問題は、選択肢に対して起こる結果を明示したうえで選択を迫るものですが、現実の問題では何が起きるかは明確にはなりません。 それでも、目の前のレバーを動かすか動かさないか、つまり自らの手で変化を与えるか与えないかを選び続けています。

閑話休題

Natureでは、久々の新製品としてNature Remo nanoの発売を開始しました。 今頃、Matterに注目した記事がいくつか出ていると思いますが、ここでは、「mini」から「nano」にどう変わったのか、省資源化の取り組みを紹介したいと思います。

ME BOM

BOM = Bill Of Materials、日本語で部品表などと呼ばれます。回路を書いたことがある方は、部品表を一緒に作ることも多いと思いますが、機構設計を行う時にも同じように作ります。 特に機構(MEchanics)のBOMなので、ME BOMと呼ばれることもあります。 まずは、Remo mini 2とRemo nanoのBOMの比較を行ってみます。

Nature Remo mini 2の部品たち
Nature Remo nanoの部品たち

部品 Nature Remo mini 2 Nature Remo nano
スリーブ 1 -
個装箱 1 1
DSNラベル 1 1
両面テープ 2 -
封止テープ - 1
ユーザーマニュアル 1 -
USBケーブル 1 -
ケーブル保持テープ 2 -
ネジ 2 -
LED COVER 1 1
FRONT COVER 1 1
保護フィルム 1 -
BACK COVER 1 1
シリアルラベル 1 1
MPCラベル - 1
基板 1 1

ざっくりと比べてみてもらえれば、部品点数が減っているのが分かると思います。 特に個装箱の数量は、同じ1でも面積自体が大きく削減されています。

部品点数が増えれば、それを組み付ける作業も必要になるし、それが正常に組付けられているかを検査する工程も必要になります。 例えば、ネジを1本減らせば、ネジをつまみ、定位置にセットし、ドライバーを持ち、あてがい、回し、ガタが無いかを確認するという作業がなくなります。 それが人手であったり、自動化されてたり差異はあれど、部品点数を減らすことが省資源化、省力化に働きやすいのは想像に難くありません。

副資材

最終製品からはなかなか目につきにくいものとして、副資材というものが生産工程には必ずあります。 例えば、汚れ防止のために作業手袋を1日ごとに新しいもの変えたり、制服(無塵服)を支給していればそれの交換や洗濯の周期も含まれます。

が、これらの副資材は工場経営の視点では重要でも、機構設計の立場で言えばもっと別の副資材が重要な要素になります。 特に、前述の部品1点ごとに必要となるものは見過ごされやすいわりに、意外と多くの資材を使っていることもあります。

分かりやすい例では、部品の輸送や取り扱いのために必要なものです。 Remo nanoの具体例でいえば、FRONT COVERやBACK COVERは成形工場から組立工場への輸送する際に、傷防止のためにサランラップのような保護フィルムを巻いています。 これは組立時に剥がされ廃棄されるため、一見無駄のように見えますが、このフィルムが無ければ輸送時に傷や汚れのために不良部品となり部品自体の廃棄が増えてしまい、全体の消費資源は逆に増えてしまいます。

他にも、両面テープなどはテープの生産工場からは、セパレータと呼ばれる剥離紙などに並べられた状態で納入されます。 プラモデルを作ったことがある方は、デカールシールが並んでる紙を想像してもらえればわかると思います。 この剥離紙も、当然その役目が終われば廃棄されますが、セパレータを無くすという事は現実的じゃないというのはわかると思います。

Remo nanoの省資源化の影響

さて、ざっくりとどのように省資源化がされてるかはわかってもらえたと思います。 一方で、そのリスク・弊害がどのようなところに出てくるかということにも触れておこうと思います。

分かりやすいのは、USBケーブルの同梱がなくなったことです。 もし家に余ったケーブルがあればそれを使ってほしい、余分なケーブルがないのであれば合わせて購入してほしいというのが作り手のメッセージです。 しかし、受け手は必ずしもそうではなく、ケーブルは当然同梱されてるもの、いざ買ったら添付されておらず別で手配する手間が必要だったということも考えられます。 買い手に対してより多くの選択肢を与えることが出来ると言えば聞こえはいいですが、今まで提供していたものを削ったととらえれば、それは改悪のように見えます。

他にもユーザーマニュアルを無くしたこともあります。 その代わりに、簡単な手順とイラストを示し、詳細はWeb上に用意することで代替としました。 Nature Remoは、Remoアプリを使いセットアップするため、このWebを見ながら、アプリと切り替えながらセットアップするというのは体験として悪くなるのは容易に想像できます。 それでも、私たちはセットアップの簡単さを自負しており、多くの人はマニュアルを見なくてもセットアップを完了できるだろうと考えています。 しかし、それでもマニュアルを必要としていたわずかな人に、より多くの努力を求めるものでしょうか?

こういう問題にぶつかったとき、いつも現実のトロッコ問題のようだと思っています。 レバーは引いても引かなくても、トロッコが進み続ける限り何かが起きます。

最後にジョジョのセリフを引用して終わります。

「納得」は全てに優先するぜッ‼ でないとオレは「前」へ進めねえッ!「どこへ」も!「未来」への道も!探すことは出来ねえッ‼


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