Nature Tech Vision を作成して公開しようとしたけどやめた話

ファームウェアエンジニアの中林 (id:tomo-wait-for-it-yuki) です。Nature ではソフトウェアエンジニアの採用を積極的に進めており、継続的にメンバーが増えています。その状況の中、一度自分たちがどのようなビジョン、文化を持っているのかまとめて公開してみるのはどうか?という話になりました。

結論から言うとタイトルにある通り、Tech Vision を公開するのはやめよう、という話になりました。その代わり、Nature のソフトウェアエンジニアリングチームにどんな人が居て、どのような文化を持っているのか、をストーリーで伝えよう!と決めました。その第一弾が前日公開した「Nature Engineering Stories vol.1」です。

engineering.nature.global

本エントリでは、Tech Vision をまとめようとした発端や最終的にやめることにした経緯を紹介します*1

Nature のソフトウェアエンジニアチーム

2022年8月現在 Nature に在籍するソフトウェアエンジニアは13人居ます。ただし、いわゆる CTO や VPoE のようなエンジニアリングマネージャーを担当する役割は存在していません。ソフトウェアエンジニアチームは (おもしろいことに) チームメンバーによる自治によって成り立っていると言えます。

今回、成り行きで私がとりまとめしていましたが、これも特に役割があってそうしたわけではないです。いつまでこういう感じが続くのかはわからないですが、これはこれで面白い組織形態だと思っています。

はじまりは OKR

Nature では目標設定に OKR を導入していて、ソフトウェアエンジニアチームでも、4半期ごとに OKR を設定しています。今四半期 (2022年7月-9月) の OKR は次の通りです。

Objective: SWEチームメンバがより楽しく働き、成長できる環境を自ら整える

  • KR1: 今期も全員で blog を書く
  • KR2: 今期エンジニアとしてチャレンジしたいと各自が宣言したことを達成する
  • KR3: Nature の Tech Vision のようなものを作って、外向けに発信する

ちなみに、OKR の話し合いは FigJam でアイデアを出しあったり、ディスカッションしています、かわいいですね。

2022年7月-9月のOKRディスカッション

KR3 に「Nature の Tech Vision のようなものを作って、外向けに発信する」を設定しています。元々、ソフトウェアエンジニアの1人として採用に関わる中で、Nature のソフトウェアエンジニアチームをうまく表現できる言葉を持てていない、という課題感を持っていました。また、ちょうど OKR を設定する少し前に CARTA さんが CARTA Tech Vision *2を公開されていて、一度こういうものを作るのも良いのではないか?と考えてチームにシェアしたことから始まりました。

Tech Vision の模索

とりあえず KR として Tech Vision のようなものを作る、となったのは良いですが、まっっっっっっっったくもって何から始めれば良いのかわからない状態でした。思案に明け暮れる毎日の週末、オーケーストアで買い物していた時に聞いていた ajitofm がちょうど「企業文化について語る」回でした。

ajito.fm

ajitofm で CARTA Tech Vision を決めるに当たって CTO の鈴木さんが色んな人にインタビューした、とおっしゃっており、「それだ!!!」となりました。ソフトウェアエンジニアせいぜい10人くらいなので、全員にインタビューしてやろう!と。

そこからはインタビュースクリプトを大急ぎで準備して、ソフトウェアエンジニア全員にインタビューして回りました。週末に ajitofm 聞いて、7/25 (月) にインタビューしていく、というのを公言しました。

それだ!と思ってインタビューをし始める

その週から実際にインタビューを開始し、翌週の 8/1 (月) には全員のインタビューを完了してました。慣れないことは腰が重くなりがちなので、やってみるか!となったあと、間髪入れずにサクッとやりきったのは良い動きだったかな、と思います。

ちなみに、使ったインタビュースクリプトは次の通りです。慣れないインタビューにも関わらずみなさん快く答えてくれました。ありがとうございます!

インタビュースクリプト

  • tech vision 的なものを作ることに対して、ざっくり思うところや考えることはありますか?
  • SWE チームを一言で表すと何になりますか?
  • SWE チームってどういうときにエネルギーが高い状態だと思いますか?

Nature の Mission / Vision / Values をシェアしながら

  • 最も Nature の企業文化を体現しているソフトウェアエンジニアは誰だと思いますか?
  • 最も Nature の SWE の文化を体現するソフトウェアエンジニアは誰だと思いますか?

Nature の Mission / Vision / Values

Nature の Culture をシェアしながら

  • Nature の Culture と SWE の Culture のシンクロ率、何%くらいありそうでえすか?
  • Nature の Culture の中で最も SWE にフィットすると思う Culture はどれですか?
  • 逆に最もフィットしないと思う Culture はどれですか?
  • もし SWE の Culture として1つ追加するなら、何を追加したいですか?

Nature の Culture

  • Nature の SWE チームは将来どうなっていくと良いと思いますか?
  • インタビュー自体へのフィードバックはありますか?

一通りインタビューが終わって…

インタビュー内容をメンバー同士でシェアしました。インタビューしたのが私だったので、名前を隠して回答を公開して、「誰のインタビューでしょうクイズ!」をやったりして盛り上げてました。

--Tech Vision 的なものを作ることについて

好意的にとらえている人が多かったです。ほとんどのメンバーが採用活動に関わっているので、採用活動にも役立つのではないか、という考えが多かったです。一方で、「今居る人たちというより。今後チームに入ってくる人のため」という意見も多かったです。これは、まだ10人強のチームでその中では大体同じような価値観を共有できている、という雰囲気があるからではないか、と思っています。

--文化を体現しているソフトウェアエンジニアについて

意見がけっこうばらけました。個人的には、メンバーに意見聞く前は大塚さんか北原さんが多いのかな、と思っていたのですが、フタを開けてみると色んな人の名前が出てきておもしろかったです。

--Nature の Culture とソフトウェアエンジニアチームの Culture

全員が全社の Culture との親和性が高い、という意見でした。人によって何に重きを置くか、の違いはあっても、おおよそ全部そうだよね、という印象でした。良い抽象度で幅広くカバーされており、これ以上いじる必要ある?という意見もありました。

Tech Vision 的なものをまとめてみる

メンバーのインタビューをして、みんな自分たちについて熟考したところ (?) で、改めて「我々はどういうチームだと思う?」というアイデア出しをしました。その結果、一応、次のようにまとまりました。

我々はどういうチーム?

  • Nature を盛り上げるクリエイティブなプロダクトを作る
  • 静かな熱狂 / Fun
  • HRT
  • 越境

「では、これを Nature のソフトウェアエンジニアはこうだ!とまとめたブログ書きます?」という話になったところで、(うろ覚えですが) 次のような意見が出ました。

  • Nature の Mission や Culture はあるわけで、Nature を表す似たような言葉が増えるだけになっちゃわないか?
  • こういう Vision とか Culture が書いてあって「良いな」と感じたことがなくて、やっぱりどういう人が居るのか伝わるようにするのが良いのでは?
  • 最近、電気ひっ迫予報ウィジェットをリリースしたので、その開発ストーリーを、今回まとめたワードとリンクさせて書くと良いんじゃない?

ということで、生まれたのが「Nature Engineering Stories」シリーズで、その第一弾は電気ひっ迫予報ウィジェットについて開発チームにインタビューすることになったわけです。

engineering.nature.global

ちなみに、電気ひっ迫予報ウィジェットインタビューを書いているとき、これ、事業をエンジニアリングする技術者たち ― フルサイクル開発者がつくるCARTAの現場 を Nature を舞台にやっているのでは?みたいな気持ちになり、今回最初から最後まで CARTA さんが発信している情報の偉大さを感じるのでありました。

一応まとめたのに公開しなくてよかったの?

良いのです。元々、納得できるものができなければ、公開しなければ良い、と考えていました。私が文章を書く上で、大好きな本にワインバーグの文章読本があります。その第9章「使えない石を捨てる」は次のように始まります。

こんなふうに始まるレシピがある。
たまねぎのみじん切り1と1/2カップを用意する。
110グラムの無塩バターで、たまねぎがきつね色になるまで炒める。
たまねぎを捨てる。
バターはとっておく。

(中略) 書く作業の大部分は、完成した文章には姿をあらわさない。書く作業の大部分は、何を捨てるかを決めることである。 (中略) ところが、不思議なことに残した言葉の中には、もうそこにない言葉の風味がとじこめられているだ。
最初に入れるたまねぎは、学習プロセスの一環である。完成作品に風味を与える。できあがりにたまねぎが入っていたら犬にやることもできないので、敬意を払って捨てる。

今回、チームメンバー全員にインタビューしたことも、自分たちを表す言葉をまとめたのも、最終成果にはなっていません。しかし、バターに風味を与えるために必要なたまねぎだったのです。捨てられた Tech Vision 的な何かは「Nature Engineering Stories」を書く上で欠かせない風味になっています。

参考にしたもの

Tech Vision とか文化を作ると言ってもよくわからん!ということで勉強しました。あと、インタビューも普段はやらないので、書籍や Web で公開されている情報を参考にしました。

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*1:中林個人視点であり、チームの総意や各チームメンバーの見解とは異なる可能性があります

*2:https://techblog.cartaholdings.co.jp/entry/carta-tech-vision